特別寄稿
私の歩んだ看護への道―詩集『小さな町で何かが変わる』をまとめて
内藤 セツコ
1
1前:賛育会病院看護部
pp.556-560
発行日 2001年7月25日
Published Date 2001/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903868
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運命を決めた日
敗戦の混乱の最中を乗り継ぎ乗り継ぎ迎えにきた父たった三十分の面会のために二日がかり豆もちと干し柿をもってきた「帰らないか」「帰らない」自分でさえも思いがけない返答クラスの半分ちかくが退学して帰ったあんなに家が恋しかったはずなのに淡々と笑みさえ浮かべて父は黙って帰って行った坂を下る父の小さくなっていくうしろ姿追いかけたいのをじっと我慢していたこれでもう家に帰れないすべてに見放された気がした家を出てくるとき連れて帰ると家族に言って出てきたことをずっと後で知ったあれから五十年の看護の道だった
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