連載 「准看報告書」以後の看護教育制度をめぐって・1【新連載】
厚生省「准看護婦問題調査検討会報告書」を読んで
阿部 俊子
1
1イリノイ大学シカゴ校看護博士課程
pp.288-290
発行日 1997年4月25日
Published Date 1997/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901597
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厚生省の「准看護婦問題調査検討会報告書」を読んで,准看護婦だった筆者としては感慨深いものがあった.私自身,准看護婦学校を卒業したときに,奨学金を貸与されていたために生じたお礼奉公という就職義務を免れて,進学コースに進んだ.しかし,そのためには数十万円の奨学金と称するものを,現金で返還しなければならなかった.奨学金を引いた給与を計算すると,最低賃全法に抵触寸前だろう金額だった記憶がある.准看学生の業務内容は,看護助手程度のもので保助看法に触れるものではなかったが,世間知らずで,それまでの栄養士として指示する立場から一転して,全寮制の早朝勤務と午後の学校の生活は,現代女工哀史のようだと思った.
准看護婦問題では,1994(平成6)年の「少子・高齢社会看護問題検討会報告書」には「准看護婦の養成を停止すべき」という意見と,「制度の改善を図りつつ継続すべき」という意見の両論併記とされた.それが現在,「看護婦養成制度の統合」というところまできたようである.これは日本看護協会側の制度廃止という形態ではなく,養成停止という緩やかな方法への譲歩,さらに医師会側の譲歩が大きいのだろう.医師会の絶対パワーを体験したものとしては,医師会が譲歩するなどは想像もしていなかったので,今回の「准看護婦問題調査検討会報告書」にはとても驚き,感動してしまった.
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