特別講義
更年期をクリアする―働く女性へのアドバイス
池本 桂子
1
1滋賀医科大学精神医学教室
pp.440-445
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901120
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更年期は,思春期の開始,結婚,妊娠,出産と同様,女性のライフサイクルにおける大きな変化の時期であり,女性は一般に身体,精神面,家庭,社会において1つの転換期を迎える.日本産婦人科学会の定義では,更年期とは,「生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期をいい,卵巣機能が衰退し始め消失する時期」だという.この時期はだいたい,45-55歳である.高齢化社会が進む中で,この時期を含む中・高齢者の精神的危機が,思秋期,中秋期と言われ,思春期に対して人生の秋を思う中年の心理をあらわす言葉として用いられることがある.
更年期に女性が種々の不定愁訴を訴えることは,周知の事実として認められており,この身体,精神症状は,加齢や閉経に伴う内分泌変動(特にエストロゲンの低下)がその原因とされてきた.しかし,更年期は女性にとって,個人,家族,職場に変化の生じやすい時期であり,心理社会的には人生の最も困難な時期であるとされる.精神医学的には,うつ病,幻覚妄想状態,心気症等の好発時期であり,心理社会的要因が関わっていることがある.従って,女性が更年期を心身共に健康な状態でクリアするためには,身体的要素以外に心理社会的要因を十分に考慮した包括的配慮が必要である.
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