連載 往復書簡 東京と小樽を結んで・15
『人間の尊厳』言葉誕生の背景にあるもの
久保 成子
1
1前善隣基督教会附属尾竹橋病院
pp.166-169
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900348
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≪アダムよ,われわれは,おまえに定まった席も,固有な相貌も特有な贈り物も与えなかったが,それは,いかなる席,いかなる相貌,いかなる贈り物をおまえ自身が望んだとしても,おまえの望み通りにおまえの考えに従って,おまえがそれを手に入れ所有するためである.他のものどもの限定された本性は,われわれが予め定めたもろもろの法の範囲内に制限されている.おまえは,いかなる束縛によっても制限されず,私がおまえをその手中に委ねたおまえの自由意志に従っておまえの本性を決定すべきである.私はおまえを世界の中心に置いたが,それは,世界の中に存在するいかなるものをも,おまえが中心からうまく見回しうるためである.
われわれは,おまえを天上的なものとしても,地上的なものとしても,死すべきものとしても,不死なるものとしても造らなかったが,それは,おまえ自身のいわば「自由意志を備えた名誉ある造形者・形成者」として,おまえが選び取る形をおまえ自身が造り出すためである.おまえは,下位のものどもである獣へと退化することもできるだろうし,また上位のものどもである神的なものへと,おまえの決心によっては生まれ変わることもできるだろう≫
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