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書評 看護師が「書く」こと
西村 ユミ
1
1東京都立大学 健康福祉学部看護学科
pp.523
発行日 2020年6月25日
Published Date 2020/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201509
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看護師が書くと世の中がよくなるとは?
私には、本を後ろから読む癖がある。だから、最後の節の「臨床を書けば世の中よくなる……かも!」が最初に目に入った。なに!?「風が吹けば桶屋が儲かる」のようではないか。宮子さんは30余年間、看護師として働き、かつ著述を業としてきた。だからであろう、第1章の「書く」こと(=風が吹くこと)には、幾重にも意味が折り重なっている。
宮子さんにとっての著述は、「依頼を受けて仕事として書く」こと。そのスタートは小学生の頃である。だから、発表した文章は「読み手のもの」という“覚悟”がある。書いた文章に潜む悪意を点検し、自身の感情に“責任”を負う。“覚悟”“責任”の先に続くのは、“選択”。書かないという選択、それは文章に反映される。これらの言葉からおわかりのとおり、著者にとって書くことは「生きること」そのものである。この「生きる」には、もちろん、看護師として働くことがあり、そこで多様なエピソードに出会ってきた。夫の臨終の場で妻が即座に通夜の寿司の段取りをする、「すごいな〜」(感嘆)。失便によるシーツ交換後、背中の御守りがなくなり、まるめたシーツを解いて探す。あるある。看護師として経験したこれらをどう「書く」かが、本書では示される。
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