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看護学生団体IONで代表を務めていたとき,20代の選挙投票率向上に向けた取り組みをしている学生団体と共同で勉強会を企画したり,学部の制限を設けない交流会を開催したりと,医療系以外の学生とのつながりにも力を入れて活動していたのですが,常々感じていたのは他学部の学生と比較して看護学生は圧倒的に真面目で,かつ自信がないことでした。「自信のない子が看護師を目指す」のか「看護学生になると自信がなくなる」のか見極められず悶々としていたときに,看護師向けのフリーペーパーのなかで看護師資格をもつ国会議員3名による対談を読み,「看護職は自分を過小評価している」「自分たちの価値をきちんと表明できていない」「我慢強い,忍耐強い,は看護職の欠点」などなど,そんな言葉を,看護職をあらゆる面から見ている方々が話していることに愕然としました。看護学生だから自信がないのだと思っていたのに,私たちはこれをあと何十年も続けなきゃいけないのか,それは仕事をしていくうえで途方もなく辛いことではないのかと泣きたくなったのを思い出します。
看護学生の自尊感情に関しては多くの論文が存在するため,これから書くことはあくまで私の主観からではあるのですが,看護学生は,自分自身が辛い想いをすることを当然だと思っているように感じます。途方もない量のレポートや課題をこなすのは当たり前,実習中の3時間睡眠は当たり前,真面目であればあるほど記録物は終わりが見えなくなる……。そのような生活のなかで,看護師になるために必要な知識や思考力を身につけることよりも,辛い思いをすることそのものが目的化している部分があるのではないかと思えてきました。こんなに大変な思いをしているのだから良い看護師になれるはずという気持ちは,良くも悪くも我慢強さや忍耐強さを促進し,将来必要なときに声を上げることを阻む素地をつくってしまうのではないかと危惧しています。またそのような気持ちのもとに「看護」に執着すればするほど医療外の社会の事情には疎くなり,「看護」から一歩外に出ると途端に一般的な話にすらついていけなくなる,そして自信を喪失してまた内に篭る,内に篭ったところで一般的な学生と違って就職活動もなく,ある程度将来の仕事が保障されているから安心していられる,そのような悪循環を身につけてしまった学生が,社会に出てから「自分たちに適切な評価をする」のも「自分たちの価値をきちんと表明する」のも,非常に困難なのではないかと思うのです。
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