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はじめに
1.活動としての移乗
移乗とは屋内ではベッドと車椅子,トイレと車椅子などの場所を移動し,屋外では自動車などへ乗り移る行為を指します.移乗が可能になると自由に場所の移動ができ,屋内では排泄や食事,入浴などの日常生活活動の拡大となり,屋外では買い物,仕事など手段的日常生活活動の拡大となります.よって,移乗は場所を移動するだけではなく,活動範囲の拡大につながるため,理学療法の実践場面で移乗が困難な場合は活動障害としての移乗に焦点を当てることが重要です.また,生活する患者にとって,疾患や後遺症を抱えていてもうまく生きていく術が必要であり1),そうした観点からも,移乗は歩行移動が困難な患者にとって重要な動作となります.
患者にとって移乗動作で介助または監視になると介助者が必要となり,自由に移動ができず,生活範囲の狭小化につながります.自宅で暮らしている方においては移乗の自立が外出を可能にし,社会参加へとつながることでQOLが向上する可能性があります.
2.移乗の自立へ向けて
自発的な活動としての実行状況には,① 動作能力,② 意思・意欲,③ 必要性,④ 環境の因子が関与し,相互に影響を及ぼしています2).移乗動作ができても,移乗しようという意欲がなければ朝起きてから1日中ベッド上で過ごすこととなるため,意思・意欲も必要です.また,施設入所中で歩行が困難な方においては,トイレ移乗が自立していればスタッフを待つことなく1人でトイレに行け,失禁が減らすことができます.このことからも移乗は必要性の高い動作と考えられます.また,トイレの場合は車椅子で移乗がしやすいように,広い空間や手すりが設置されているなど環境の因子も重要です.
本稿では活動や参加に念頭を置いて,移乗動作における評価の視点や理学療法介入としての移乗自立へ向けた取り組みについて紹介します.
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