連載 医療と社会 ブックガイド・73
死の決定について・7:シンガー
立岩 真也
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.620-621
発行日 2007年7月25日
Published Date 2007/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100714
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安楽死や尊厳死と呼ばれるものに関わり,ピーター・シンガーという人の本を取り上げている。その人は,本人が死にたくないと言っている反自発的な行いについては反対しつつ,新生児を殺すことなど非自発的なものの一部も含め,死ぬ/死なせる行いに賛成なのだが,なぜどのように賛成しているのか。この世にある賛成のパターンの数がそうあるわけではないから,私自身にはそう思い入れのないこの人の言うことをすこし丁寧に見ても無駄にはならないと思って,すこし長くなっている。
そして前回も紹介したが,彼にはブッシュ批判の本などもある。人工妊娠中絶はじめなんでも反対という保守派とは立場を異にするという意味では当然と思われるかもしれないが,彼は,世界に存在する格差の是正を「ラディカル」に訴える人でもあり,動物の権利を主張する人でもある―2000年代に入っての翻訳ではパオラ・カヴァリエリ,ピーター・シンガー編『大型類人猿の権利宣言』(原著1993,訳2001,昭和堂)。とすると,この人(たち)の言うことを考えることは,この世に文句を言うとして,社会の変革を主張するとして,どのような方向・言い方がよいのかという問題を考えることでもあると思う。
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