発言席
長寿の地,沖縄のケアに思う
向井 承子
pp.425
発行日 1995年6月10日
Published Date 1995/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902755
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この4月,沖縄の看護婦さんたちの集まりにお招きいただいた。以前から,沖縄の医療は他府県とは違う歴史伝統を持つ,と聞いていたので,集会に先立ってその歴史と現状を教えていただけないか,とお願いしてみた。たった3日間の滞在だったが,県立病院の看護婦さんたちからお話を伺ったり,離島の医療の取材をさせていただいたり,改めて「本土」とは違う歴史を歩んだ風土を教えられる機会となった。
沖縄は,長寿日本一の地として知られる。老人たちは死ぬまで役割を持ち,「在宅」で家族に温かく包まれながら死ぬ,など巷間伝えられる沖縄のイメージは,ややもすると行きづまった「本土」側のアンチ・テーゼとして最南端の地,沖縄に幻想、を託しているのではないか,とひねくれものの私には思えてならなかった。なぜなら,高齢化社会を包む条件は,地域により進行度の違いこそあれ大同小異だからである。「在宅」を支える中心は女性であり,長寿に伴う病の苦悩が皆無のはずもない。その「癒し」をだれが引き受けているのか。苦痛を治療するのはだれなのか。
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