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受講者と一緒に考えるスタンス
高齢者の健康づくりを目ざして,しんやまの家で実施している「ナイスミドルの健康講座」では,コーディネートを担当した保健婦の力が十分に生かされています。「保健婦は地域に出よう」とよく言われますが,地域の人に受け入れられる保健婦でなければ仕事になりません。ナイスミドルの健康講座では,保健婦が“教える”“指導する”という一方通行の学習スタイルではなく,「受講者と一緒に考え話し合う場」を大切にしたことが受講者の心をとらえたようです。
この講座では,保健婦のほかに歯科衛生士,食品衛生監視員,理学療法士などの保健関係の講師との学習が6年間続いています。各講師が講座のスタート当初から目新しい材料を提供して,受講者の興昧と学習意欲を引き出してきたことが継続してきた要因の1つでしょう。歯科衛生士は,高齢になれば必ず出てくる咀嚼,嚥下に関する問題について,「いざというとき役に立つように元気なときから鍛えておこう」ということで“舌体操”という実技を始めました。理学療法士は,高齢者の転倒防止のために足首,足指,足の筋肉全体を柔軟にずることや,転びそうになったときのストッパーとしての役割ができる足づくりを目標に“足の裏体操”をレクリエーション指導員と共同でつくってゲーム化しました。食品衛生監視員は,“毎日食べる食品を安全に”という視点から,水・農薬・消毒薬などの安全基準を知って,宣伝にまどわされない正しい知識を取りあげました。こうした盛りだくさんの学習内容が,縦割りにならないようにコーディネートしたのが保健婦でした。また,保健婦は,日常生活の中から拾いだした材料を使って,たとえば痴呆症と介護の問題を受講者が自分自身に置き換えて考えるように,受講者が介護される体験をするなど,受講者1人ひとりがよく理解できるような学習をしました。
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