特集 公衆衛生はどう変わるか—保健所法改定を機に
[世界の公衆衛生の流れ]
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石川 信克
1
1結核予防会結核研究所
pp.965-968
発行日 1993年10月25日
Published Date 1993/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900815
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新しい公衆衛生への運動
公衆衛生は医学の歴史の中では新しい分野といえるが,今世紀になってさまざまな概念の変遷が見られている。古典的公衆衛生運動として19世紀の半ば,貧困と疾病の深い関係を分析した英国のチャドウイックの報告は,世界最初の「公衆衛生法(1848)」制定の契機となった。また初めての公衆衛生医ジョン・サイモンは地域衛生医の地位確立を推進し,環境衛生,住宅や労働条件などの改善がなされてきた(構造論)。
一方,20世紀初頭より個人保健や一般の人々自身の役割や責任も強調され,個人のライフスタイルや健康行動が公衆衛生や臨床医学でも重要視されるようになってきた(ライフスタイル論)。しかし専門化,高額化が進む医療の中で,個人の責任を強調し過ぎることは公衆衛生の後退であった。
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