発言席
ゆめの夢
将基面 誠
1
1岩手県田野畑村健康福祉センター
pp.89
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900639
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秋の夜長を灯火に親しみながら,こう考えた。『医療は「待ち」で,保健は「攻め」だ。医療は求められて初めて動く。ところが保健は,こちらから出向き,人の生活に立ち入ってお節介を焼く。ふつう,お節介は嫌われる。けれども保健は疎まれていない。不思議だ。たぶん,保健婦が親切だからだろう。でも,親切の押し売りだけなら疎まれる筈だ。疎まれないのはなぜか? きっと皆が納得しているのだろう。なぜ納得するのか? おそらく,保健婦の話に非合理を感じないのだろう。保健婦の態度に親愛と信頼を寄せ安堵を覚えるのだろう。どうしてだ? それは保健婦が,いつも,人に敬意を表すからだ。平たく言えば,保健婦は人を見下したり,差別したりはしない。誰にでも同じように接している。つまり,公正さと公平さが身についている。では,自分はどうだ? ちょっとお恥ずかしい……』
足もとの冷気に,ふと気がついた。いつしか眠り込んでいたらしい。それにしても今見たあの光景は? そうか,夢を見ていたのだ。おぼろおぼろに反芻してみた。
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