特別寄稿
ダルク:薬物依存症者のためのリハビリテーション・センター—仲間とともに回復への道を歩む場
小宮 敬子
1
1東京都精神医学総合研究所・医療看護研究部門
pp.545-551
発行日 1992年7月10日
Published Date 1992/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900524
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はじめに
ダルクは,薬物依存に苦しんだ後,薬をやめたいと思った人の手助けをするための施設である。“施設”とはいっても,通常の施設のイメージからは程遠い。なぜなら,ここのスタッフは全員薬物依存からの回復者であり,入寮者(ここでは利用者をこう呼ぶ)は1日3回のミーティングに出ること以外にはさしたる規則らしきものがない,というのがその特色だからだ。ここではスタッフと入寮者とが共同生活をし,薬に頼らない新しい生き方を模索している。Drug Addiction Rehabilitation Centerの頭文字を取ってDARC,これを“ダルク”と読む。
私が初めてダルクのメンバーに出会ったのは,1988年の第1回横浜アディクションセミナーの時だった。このセミナーは,アルコール・薬物依存,摂食障害などの嗜癖問題を,“自分自身を照らし出す問題”として捉え,市民レベルで考えていくために始められ,依存者本人とその家族の体験発表を中心に構成されていた。そこで,ダルクに入所してようやく薬をやめられた青年の話を聞いた。彼は幼い頃から喘息で,それを治すための咳止め薬が依存のきっかけとなった。薬だけにとらわれていった生活は悲惨そのものだったが,彼はそれを不思議とユーモアたっぷりに語り,会場は笑いの渦に包まれていた。
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