特集 歯科保健
生涯を通じての歯の健康づくり
上條 英之
1
,
宮武 光吉
1
1厚生省健康政策局歯科衛生課
pp.353-358
発行日 1992年5月10日
Published Date 1992/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900478
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はじめに
長寿社会を迎えた今日,高齢者が生涯を通じて健康な生活を過ごすことができる社会を建設していくことが重要な課題となっており,健康づくりの一環として豊かな食生活を保持する上で,歯の健康づくりは,重要な一役を担っている。歯がすべて無くなった者が入れる総義歯では,自分の歯をすべて持っている人に比べて,咀嚼能率が約15%にしか過ぎないといわれている。高齢者の多くは義歯を装着しているが,昭和62年に行なわれた保健福祉動向調査では,義歯を入れている者のうち,約1割から2割の者が「食べ物の味がわからない」,「義歯が合わない」等と回答しており,歯の喪失予防を図り,歯の健康づくりを進めていくことが豊かな生活を過ごしていく上で必要となっている。
最近,歯の健康づくりを進めていくキャンペーンとして,80歳で20本の歯を保つことを目標とした8020(ハチマルニイマル)運動が盛んになってきていることをはじめ,成人および高齢者に対する歯科保健事業の充実強化が行なわれるようになってきた。また,歯の健康づくりに対する住民の関心も高まりつつある。
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