調査・報告
東京都府中保健所における精神科デイケアの実際と考え方
柏木 由美子
1
,
尾崎 新
2
,
大橋 ミツイ
3
,
宮野 総子
3
,
小松 啓
3
,
藤原 誠二
3
,
女鹿 美穂子
3
,
上村 晶子
4
1東京都立中部総合精神保健センター
2日本社会事業大学
3東京都府中保健所
4東京都精神医学総合研究所
pp.595-601
発行日 1989年7月10日
Published Date 1989/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207779
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はじめに
保健所デイケアを論ずるとき,考慮すべき点が少なくとも2つある。1つは,デイケアにおける回復援助の考え方が多様なことである。このことは,デイケアの目標としてアフターケア,再発防止ばかりでなく,就労促進,生活指導,相互援助,人間関係の拡大,居場所の提供などさまざまな課題が論じられていることにも明らかである1,3,4,7,8,18)。2つは,デイケアにおける実践内容が多彩なことである。プログラムを例にすれば,生活指導を重視するプログラム,就労促進を意図する内容,遊びを重視するプログラム,メンバーの主体性を重視する運営など,その内容も多彩である。つまり,同じ保健所デイケアといっても,その内容や考え方にはさまざまな違いがある。相違があることは必ずしも問題ではない。多様な回復援助の考え方は病者が選択することのできる援助の幅を広げると考えるからである。しかし,われわれが保健所デイケアに関する全体的論議が今ひとつ深まらない印象をもつ背景には,デイケアの歴史の浅さ,評価方法の乏しさに加え,デイケアが多様な考え方や内容を明確にせず,それらを曖昧にしたまま論議を進めている事情が存在しているように思う。
これまで,東京都府中保健所デイケアでは,治療にあたっての考え方14,15),新しいプログラムの試み5,12),またスケールを用いた回復調査16,17)をいくつかの論文などで報告した。
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