連載 住宅問題と保健婦・6
住居と精神衛生
中沢 正夫
1
1代々木病院
pp.62-66
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207272
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はじめに
この小論における「住居」とは建物を意味しない。広く「住—環境」をさすことにしたい。即ち,どんな家に,だれと,どんな人ととなりあわで住んでいるか――を問題としたい。前号で,現代の住居の特徴の第一として,私は「近隣を形成しないしくみ――プライバシーの過剰重視」をあげた。かつて私は,難治なうつ病に悩む老歯科医を担当していたことがある。この歯科医は当時,三方の家と「地境争い」をおこしていた。彼の住居は,近隣を問題としない限り,すぐれた建物だった。このように「住居」と考えるとき,住んでいる人,及び,家庭に何を求めているか(住居観)を問題としないわけにはいかない。
精神衛生から「住居」を考えるとき,幾つかの問題の捉え方がある。
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