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<要旨>
基調講演――臨調「行革」下で,国が国民の生命を守る責任を放棄しようとしている。保健婦をなくす動きも同じものだ。私たちがどうすればよいかを考える時,沢内村はよい目標になる。沢内村を沢内村だけにしないために,保健婦は地域のたくさんの人達と手をつなぐ必要がある。組織づくりはどうすればよいのか,仕事の見直しはどんな視点から行えばよいか,住民の健康づくりのビジョンを住民とともにつくりあげていこう。という内容で,ともすれば巨大な壁の前で打ちひしがれそうになっている保健婦集団に,勇気と一つの道を示してくれる講演となった。
分科会――今回の分科会は,各地の運営委員が各々の分科会の企画をし,運営を担当する方式をとった。
「保健婦の仕事って何んだろう」の分科会は,いきいきとした仕事をしたいという願いから生まれ,今後も継続することを確認。「障害児フォローの受皿づくり」では,学校の教師がボランティアで始めた障害児保育が口火となり,正規の療育,訓練室に発展した体験報告を中心に,保健婦が現状から一歩踏み出す行動が必要であることが話しあわれた。この分科会は,北海道の医療の過疎地域である道南地方の保健婦たちにより運営された。
「老人問題〜保健婦の役割」の分科会は,「老健法の中では,保健婦は検診屋としか期待されていない。しかしこれには納得できない」とする釧路地区の保健婦により運営された。この分科会では,ホームヘルパーと協力して生活実態調査をした報告と,保健所の老人精神衛生相談の報告があり,これを基に,保健婦の役割について話しあった。
「乳幼児健診の見直し」では,乳児相談を受診した数日後に母親が乳児を絞殺したという,ショッキングな事件のおきた町からの報告を中心に,健康相談の場での保健婦の視点や,取り組みについて討論。乳児の健全な発達は健全な母親によって保障される,そのための援助として,近所づきあい,グループづくりなどについても話しあいを行った。
「効果的なグループ活動」では,都市における保健婦活動の一つのあり方として,札幌市が取り組んだグループ活動の経験などが報告され,たくさんのグループとかかわりあって,住民一人一人の問題が出しあえるような仲間をつくっていく,このことが生き生きとした仕事をするためには大切な条件であることが確認された。
「性教育を考える」分科会は,親が子に対して行う性教育は,人として生きていく上での基礎的な部分であるとおさえて取り組んだ報告を受け,デモンストレーションなども入れて学びあった。
「精神障害者の在宅生活援助」では,就職1〜2年の保健婦が主なメンバーとなり,事例研究を通して精神障害者に対する取り組みの基本を学んだ。
シンポジウム――保健婦は今,厳しい情勢の中で展望を失いかけている,このような状況からきりぬけるには,情勢を学習し,世の中の動きを背景に積み上げられてきた保健婦の歴史を学ぶことが大切である,という視点からシンポジウムを計画。保健所,大都市,中都市で20〜30年の経験をもつ保健婦と,小さな町での10年間活動してきた保健婦に,"自分が働き続けることを支えたものは何か"について報告を受けた。北海道の保健婦活動の歴史が浮きぼりにされ,自分の活動の歴史とあわせて考えることができた。
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