発言席
公害に苦しむ子らにやさしい保健婦の一声を
城谷 正雄
pp.441
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206001
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私は,大田区で小児科を開業してから約40年になります。その間,戦争による破壊と,それに続く開発による公害のために,大田区の子らの多くは生命と健康をむしばまれ,苦しみと悩みの毎日を過ごしているという現状を考えると,診療所の中だけにいたのでは,子どもたちの生命と健康を守ることはできないと気付きました。ちょうど8年前,公害による被害患者たちが,国及び自治体にいくら陳情しても何もしてくれないので,住民の力で患者を守り,慰め,励ますよりないと決心して,公害に関心をもつ人たちに呼びかけ"大田区から公害をなくす会"をつくりました。私もすぐにこの会に参加し,今日も運動に協力しています。
公害をなくす会には,一般住民をはじめ,公害に関心をもつ保母・教師・弁護士・科学者・医師・看護婦などが自主参加しており,お互いに自分の職業の多忙の中で,同じ住民の立場で全く奉仕的に活動をしています。このような公害をなくす運動は,全国に大小さまざ主な形で起っていますが,その運動に対し,国・自治体は協力するどころか,厄介もの扱いをし,温かい手を差しのべようとしません。その中で吏員や保健婦の一部のものは,役所としての立場を乗りこえて,個人の自覚と意志から,勇気をもって入会し積極的に協力してくれています。そのことが,どんなに住民や患者の励ましになっているかわかりません。
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