世界の保健・医療制度/過去・現在そして未来……
スウェーデンの医療—1
田中 恒男
1
1東京大学保健管理学
pp.536-539
発行日 1974年8月10日
Published Date 1974/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205509
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世界の中で行なわれている医療にはいろいろなタイプのものがある。この分類は学者によって表現が異なっているが,基本的にはその国の経済体制による例が多い。そういった形で分けると 混合医療供給体制をとる国……米国など
国家保障による供給体制をとる国……英国(NHS)など
健康保険を前提とした供給体制をとる国……日本,西ドイツなど
国の統制に伴う供給体制をとる国……ソ連,東欧圏諸国
などの4タイプが一般的に分けられている。ここでおそらく読者が不審に思うことは,スカンジナヴィアの国々,いわゆる福祉国家といわれている国々はどこに入るのか,という点であろう。
スカンジナヴィア諸国は,第二次世界大戦終結以後ナチス-ドイツによって荒廃した国土を復興させるためと,近代化を急速に果たすための国家的努力が払われたが,その折,社会主義的経済機構が取り入れられた。しかし,私企業に関する限り大幅な自由主義的経済方式を認め,公共的部門についていわゆる社会化方式が盛り込まれたのであった。この結果は,いわゆる"高福祉・高負担"の典型を形造ったが,この現象は特にスウェーデンにおいて著しかった。スカンジナヴィア諸国の中でも最も開発が進み,行政制度も整っているこの国において,保健(医療も含む)制度の社会化は急速に進んでいった。この限りではソ連型に近いが完全な社会化方式でなく,健康保険方式による社会化である。(表1)
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