連載講座 がんの疫学・4
がんの予防とその対策
丸地 信弘
1
1東大医学部保健管理
pp.346-351
発行日 1974年5月10日
Published Date 1974/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205477
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はじめに
がんがどうして起こるか,目下のところはっきりしていない。刺激説,ウイルス説,遺伝説,突然変異説,逆入説などが言われているが,外界の刺激が大きな要因であることは確かである。歴史的に有名な,ロンドンの煙突掃除人の陰のうがん発生の事実がヒントになって,山極・市川らによるコール-タール発がんは成功したが,これは他面では,このような職業にたずさわる人々は身体を清潔にすることで,陰のうがん罹患を予防することができることを示したものである。
予防という概念は多様性があって,例えば伝染病の予防と,高血圧の予防ではだいぶ意味が違っている。更に,がんの予防となると問題が複雑で,本態がまだ解明されていないのに,予防など不可能だという考えもある。しかし,発がん機序の解明も,動物実験でいわゆる発がん性物質が数多く発見されてきた現在では,全くわからないものではないが,いずれにしても発がん機序からの予防を今すぐ考えるのはむずかしい。
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