Medical Topics
オーストラリア抗原
藤沢 洌
1
1慈恵医大第1内科
pp.60-62
発行日 1971年12月10日
Published Date 1971/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205008
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1.はじめに
伝染性肝炎や血清肝炎の病原因子がウイルスとしての性格をすべて備えていることは,すでに20年も前から明らかにされていながら,肝炎ウイルスの分離同定は多くの研究者の努力にもかかわらず,いまだに成功していない。ところが,1963年,フィラデルフィアの癌センターのBlumbergによってオーストラリア抗原が発見され,この抗原が肝炎ウイルスときわめて密接な存在であることが明らかにされるに及んで,久しく幻のウイルスといわれてきた肝炎ウイルスの研究に新生面が開かれた。
Blumbergは血清β-リポプロティンの抗原性について系統的な研究をすすめていたが,頻回の輸血を受けた血友病患者の血清とオーストラリア原住民の血清を反応させたところ,いままで見つかっていなかった抗原性を原住民血清中に発見して,これをオーストラリア抗原(Au抗原)と名づけた1)。その後の検索によってこの抗原の人種間分布は,欧米白人0.1%,アフリカ黒人1〜2%,東南アジア諸国民5%,オーストラリア原住民,ポリネシア人2〜7%,日本人1〜2%であって2),陽性率の高い地域にウイルス肝炎の流行が常在している点が注目された。
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