特集 輸血業務と臨床検査
輸血用血液の臨床検査
4.オーストラリア抗原
富岡 一
1
1慶大・中央検査部微生物・血清
pp.1234-1240
発行日 1972年11月1日
Published Date 1972/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907816
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オーストラリア抗原(Au抗原)ははじめはダウン症候群,ポジキン病,白血病,結節癩などとの関連性から注目された1,2).しかしその後Blumbergら2),大河内ら3),Prince4)などによって1967-68年にかけてウイルス性肝炎との関係がしだいに明らかにされた.今日では血清肝炎の病原関連因子として大方の関心を集めている.しかしAu抗原の発見者であるBlumberg,大河内などが用いたゲル内二重拡散沈降反応は,今日からみれば検出感度の低い検出法である.その結果,たとえば献血者血液でのAu抗原の検出頻度が0.5-1.0%程度であるのに,輸血後肝炎の発生率が20%前後であるなどして,またAu抗原から核酸が証明できないことも手伝い,一部にウイルス性肝炎におけるAu抗原の意義づけに疑念をいだくむきさえみられたことがあった.
かかる状態のなかにあってAu抗原の検出法の開発には多くの熱意がそそがれ,その結果最近数年間のうちに10種に余る検出法が開拓された.これら開拓された各検出法での検出感度は術式により著しく異なる.またAu抗原,抗体の検出態度のうえにもそれぞれの特徴が知られている.しかも検出法を実際に行なうにあたっては,技術的な面のみならず,資材の入手上の難易,判定の明確さ,経費などが問題となる.特に術者への感染その他の危険性も十分考慮されなくてはならない.以下これらの概況にふれながらAu抗原の解説をこころみたい.
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