特集 主婦の健康管理
農業近代化に伴う農家主婦の健康障害
若月 俊一
1
1佐久総合病院
pp.22-28
発行日 1969年2月10日
Published Date 1969/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204376
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1.はじめに
過ぐる10年間のいわゆる高度経済成長の政策は,日本の農業のかたちと,農村の暮らしをいちじるしく変えた。若い生産年齢層の都会への流出は,農村人口の年齢構成を変え,その「人手不足」の中で,農業にも多くの動力農具や農薬が導入され,他方また農村生活の中にも,多くの家庭電気器具などが使われるようになり,ともかく形の上では,「近代化」の道を歩んだことは疑いない。
しかし,この「近代化」「都会化」の実態を追求してみると,これを手放しで喜べない幾多の問題を見出す。つまり,その根底には百姓時代からの相変らずの健康犠牲がつきまとっている。兼業農家のおびただしい増加,「主婦農業」,「出稼ぎ」などは,農家の生活,ことにその基礎としての健康の破壊をもたらしつつあるし,また農業技術の近代化とともに,その労働の中に従来とは異なった新しい型の健康障害も続々と生れている。すなわち,「近代化」といっても,封建時代から強制されてきた,百姓の健康犠牲の生活からの解放にあまり役立っていないのみならず,むしろ,その上にあぐらをかいて,形だけの「近代化」が行なわれているのではないかという疑いが強い。かつて「半封建的」であったものが,今日では,高度経済成長の衣をまとって「半近代的」の姿をみせている。しかし,その本質はまったく同一なのではあるまいか。
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