特集 救急医療をさぐる
救急士と僻地医療
渋沢 喜守雄
1
1国立王子病院
pp.30-31
発行日 1968年7月10日
Published Date 1968/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204221
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はしがき
たしか読売新聞だったでしょう,交通事故発生が史上最高となった昭和39年に,交通戦争という新しい言葉—概念をつくり出しましたが,当時,警察関係,消防関係には立派な交通事故統計資料がつくられておったのに,医学領域では年間を通じた統計というのがなく,これではいけない,医学的な資料をがっちり作らなくてはという考えで,私たちは全国有志で救急医療なかんつく交通外傷の資料づくりをはじめました。
それから,いろいろの方面に手を出し,したがって,いろいろ対策なども考えましたが,どれもこれも政治—行政の問題につきあたり,一介の勤務医ではどうにもならぬ壁にぶつかり,また圧力が加わったり,また各新聞が交通事故の重大性を力説しても,なかなか,実施にまではいきにくいということを,身をもって,体験しました。いま救急士(あるいは救急師)ということを述べさせていただきますが,公務員5%を削減しようという矢先に,そういった新しい定員増などは,もっての外だというお叱りもあり,医療関係者にさらに新しい職種を加えるのは困るというご意見も何度もきかされ,結局,渋沢のいう所は時期尚早であるとして,はねのけられているしだいであります。
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