教養講座 詩の話・9
感覚のはたらき
山田 岩三郎
pp.69-71
発行日 1960年8月15日
Published Date 1960/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911153
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昆虫のなかには,1匹の雌のにおいをかぎつけて,はるばる遠く数キロもとんでくるのがあるという。雌のはなつ香りをかぎわける器官のはたらきによるのだそうだ。ある研究家の実験によると,昆虫のもつ触角がそのはたらきをするのであつて,触角を切除するとまつたくそうした能力を失するとのことである。昆虫の触角は触覚器官としてばかりでなく,人間の鼻のような嗅覚のはたらきももつのであろう。また昆虫のこの触角は音をきく聴覚の能力ももつているとのことである。いや聞きわけるのではなく,音波として感じとるはたらきがあるらしいのだ。
チヨウなどが,足のさきでものの味を感じるということはすでにあきらかにされている。人間が口や舌で感じる味覚のはたらきを,足のさきで果すということは,話だけでもふしぎに感じられる。
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