社会の窓
世界はゆれる
野口 肇
pp.64
発行日 1966年6月10日
Published Date 1966/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203676
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日本は,アジアは,そして世界はどうなるか,国民のくらしむきは改善されるか--と質問をうけて即答できるひとはいまひとりもいません.佐藤さんしかり,ジョンソン大統領しかり,コスイギン首相またしかり,ただフランスのドゴール大統領だけは例外ですが,この人物はもともと神がかりだから,なにを口走るか見当がつきません.それほどいまの国内外のうごきはふくざつのかぎりです.
たとえば大蔵省が今回発表した1日の食事メニユー186円なりをめぐって料理や栄養の専門家諸姉がさまざまの意見をかわし,主婦連のとかくうるさい代表たちがメジリをたてています.この1日186円は成人男子の食事で,つとめ帰りにたちよるオデン屋での一合酒ははいっていません.また子どもはそれ以下の計算ですから,いっさいおやつぬき,もともとムリを承知で役所がはじいた規準です.ああ,ほしがりません,勝つまでは,と古いメロデーがきこえてきます.ただこの数字は昨年くれにやはり大蔵省がだした175円なりに物価値上げ分を加味した親ごころ(?)で,妻に3人の子をかかえた免税点以下の所得者に適用するそうです.ご承知のようにいまどこの大衆食堂にいってもいちばん安いのはうどん,そば60円が最低ですから,およその見当はつこうというものです.これが政府のいう国民生活の繁栄,向上の中身です.
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