特集 現代の保健婦
公衆衛生活動と保健婦の誕生
斎藤 潔
1
1国立公衆衛生院
pp.8-12
発行日 1964年4月10日
Published Date 1964/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203072
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はじめに
わが国の公衆衛生活動は,戦後十数年の間に新しい制度のもとで,伝染性疾患の防遏や国民の死亡状態の改善,寿命の延長などに輝かしい進歩を示してきた.それはある意味では欧米諸国の歴史にも類をみないほどの急速な進歩であったが,この間にあってあらゆる社会的な悪条件と闘いながら,文字どおり公衆衛生活動の第一線のにない手として前進してきた保健婦の歩みは高く評価されてよいと思われる.
公衆衛生活動は,世界的にみても第二次大戦を契機として,大きな転換を経験しつつあるが,わが国においてもここ数年来,社会的,経済的な諸条件の急激な変貌によって,公衆衛生活動は大きな転換の時期を迎えつつある.また,これは一面からいえば,戦後十数年の間に新しい制度のもとにおいて積み重ねられてきた自らの経験と実績とをふまえて,今後のわが国の現実に即した公衆衛生活動の具体的なあり方を見きわめてゆくための反省の時期であるともいえよう.このことは,公衆衛生活動の第一線のにない手である保健婦の活動についても,そのまま当てはまることはいうまでもない.また,社会的な変動の激しい時代に,この種の社会的な活動についてその将来のあり方を見定めるために,最も必要なことは歴史的アプローチであろう.本誌の現代保健婦論の特集に際して"保健婦はなぜ生まれたか"というテーマがとり上げられたことも,そのねらいはここにあると考えられるのである。
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