連載 大阪府保健所保健婦の歴史・2
―保健所創立期(2)―保健所の誕生と保健婦活動
衛保会歴史部会
pp.804-812
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207385
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1.保健所の誕生
昭和初期に世界を襲った金融大恐慌は,日本の資本主義を根底から揺るがせ,工場の閉鎖,失業者の増加,農民の零落を引き起こしました。このため経済の再建と過剰人口のはけ口を,大陸への武力進出により解決しようとする動きが起こり,満州事変,日華事変が勃発し,非常に不安定な戦争時代へと進んでいきました。このような社会情勢の中で,我が国の衛生行政は,国民の体力向上,出生率の増強,結核予防が重視されるようになり,国民の保健知識を高め,日常生活での実践を行うための保健指導に重点が置かれるようになりました。こうして,衛生行政は,明治以来警察行政の一部として発展してきた取り締り中心のものから,指導を中心にした衛生行政へと変化していきました。昭和12年,医師など専門技術者を中心とする指導機関の設置が必要になり,保健所法が制定されました。
保健所法が制定される前の昭和5年,藤原九十郎氏を中心とした我が国の視察団が,ロンドンを訪れロンドンの衛生施設を視察しました。それを「転向すべき保健施設」という論文にまとめ,発表しました。この論文では保健所設立の必要性が説かれています。この論文は日本に初めて保健所が紹介され,保健所の必要性が打ち出された初期のものでした。また,その頃結核のまん延が,大きな社会問題となり,その対策として,政府は「保健衛生調査会」に諮問し,昭和11年に保健施設拡充計画を発表しています。
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