社会技術講座
公衆衛生への社会技術の導入について
勝沼 晴雄
1
1東京大学
pp.45-47
発行日 1962年1月10日
Published Date 1962/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202496
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I.社会技術の必要性
話の進め方の上手な人,話し方の上手な人,また座のとりもちの上手な人,ものの聞き方の上手な人,人と一緒に仕事をすることの上手な人,というように,一人の人又は多数の人々を相手にして何かをしようという時に上にのべたようなすぐれた才能を備えている人がいることは昔から誰でも知つていることである.
しかし,今日まで,このような特別の才能をもつている人は,持つて生れた素質に加え,長い年月いろいろな成功や失敗の体験を通じて,こうした特別の才能を身につけるようになると考えられてきた.持つて生れた天賦の才能によつて,こうした点に特別すぐれた人というのも少なくない.例えば子供の時から,友人達の間でひとりでに中心人物になるような人とか,その人の指揮があるといつでもチーム・ワークがよくとれるというような人などはこれである.けれどもすべての人が生れながらにして,そのような才能をもつているとは考えられないところであり,むしろ,生れつきそうした才能をもつている人の方がはるかに少ない筈である.それでは天賦の才としてこのような能力を持合せない人々は,どのようにして,それを補い,又獲得したであろうか.恐らく親や先輩から,どのような時にはどうしたらよいかを教わり,また自分自身いろいろな場面で生きた体験を積むことにより,努力によつて学びとつたに違いない.
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