病態生理講座
高血圧の病態生理
武田 忠直
1
1東大上田内科
pp.49-52
発行日 1961年6月10日
Published Date 1961/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202348
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きがえま
高血圧とは,最大血圧(収縮期圧血)ならびに最小血圧(拡張期血圧)が,ともに異常に上昇している心臓血管系の病的状態であるといえる.このような状態は,種々の腎疾患,内分泌疾患,神経疾患などに際して,症状のひとつとしてあらわれるが,高血圧が持続的で,患者の病像をつくりあげるのに一次的な役割を占めている疾患を,高血圧症というのである.そしてその大多数は,今日なお原因が十分明らかではなく,本態性高血圧症と呼ばれるものである.
一般に高血圧症では,かなり血圧が高くても,初期にはほとんど症状がなく,自覚されないのが普通である.しかし後に述べるように,高血圧症においては末梢血管抵抗の増大があるために,心臓は長期間にわたり過剰の負荷を受け,また全身の血管,とくに脳,心,腎など生命維持に心要な臓器の血管に,やがて器質的変化を生じて,これらの臓器の循環障害をきたすようになる.このような時期になると,循環障害にもとつく種々の症状があらわれ,また他覚的にも,諸臓器の機能異常や病的所見が認められるようになる.
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