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女のからだとこころ(3)
阿部 幸男
1
1読売新聞社婦人部
pp.44-45
発行日 1961年4月10日
Published Date 1961/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202310
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- 文献概要
男の博愛主義と女の独占主義が人生の悲劇を生む一つの原因になつていることは確かだが,逆にこれが人生の悲劇を防ぐ役割も果しているのだからおもしろい.
なるほど,貞淑な妻は,夫の博愛主義からくる多情に泣かされる.しかし,もし男が女と同じように独占主義者だつたらどうだろうか.夫と妻が互いに愛し合つている独占主義者同志なら問題はない.だが,もし,妻が何かの理由で夫に失望を抱き,別れたいと考えたとき,夫の独占主義は別れを許さないことになる.たとえ,博愛主義の夫でも,妻を愛している以上,そう簡単に妻の別離の申し出に同意するはずもなかろうが,妻の決心が固いと思つたら,大抵の夫が男らしく諦めるだろう.この男らしいあつさりとした気持も,男が博愛主義者であるという裏付けから生れているものなのである.
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