社会の窓
予算からみた社会政策
阿部 幸男
1
1読売新聞社婦人部
pp.52-53
発行日 1960年3月10日
Published Date 1960/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202044
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35年度の1兆1696億円の予算は,もみにもんだ末にやつときまつた.国民待望の減税は遂に日の目を見なかつたが,これも伊勢湾台風の災害あと始末に廻すとあつては,目をつぶるのも止むを得ないかも知れない.それにしても,これ幸いとばかり,例年通りの各省の凄じい予算分捕り合戦が展開された上,これが大蔵省対自民党ボスの内の突張り合いになつて,難航を重ねる始末になつたのはあまりいただけない.「2千億円以上の税金増収分を見越しながら,びた一文も減税に廻さないばかりか,政党人がよつてたかつて予算を食い荒すのではやり切れない.もつと国民の生活にプラスになる予算の使い方をしてもらいたい」という声が出てきたのももつともな次第といえよう.
それでも,僅かながらも国民生活への配慮が見られないわけでもない.私たちの生活に密接な関係のある社会保障や福祉関係の厚生省所管予算を見ると,前年度の1300億円余に比し,35年度は1650億円余と約360億円の増加を示している.残念ながらこの数字を額面通りの増加分とは受けとれない.というのは,このうちの約305億円は,国民年金その他の自然増と見られるので,実質的な増加は残りの約45億円ということになるからだ.
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