講座
放射線の医学的応用
山口 清士
1
1厚生省医事課
pp.42-47
発行日 1960年3月10日
Published Date 1960/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202042
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はしがき
原子力と云う言葉を私達が耳にしてから,すでに10数年になりますが,日本の広島,長崎に世界で初めての原子爆弾が投下され,一瞬にして広島,長崎はあの悲惨な事態に追いこまれ,人類最大の不幸をもたらして,終戦となつたのも原子力の研究によつて生み出されたものの一つでありますが,この恐しい力を戦後は平和的に利用することに世界は努力しているのであります.ただ原子力の平和利用も充分研究して使用しなければ地球上は放射能による汚染で誠に危険な状態になるのです.
昭和29年3月に起つた第5福龍丸事件では久保山さんが水爆実験の際の放射能の灰をおびて帰国し,その後国立東京第一病院でのあらゆる治療の甲斐もなく,死亡されたことは皆さんの記憶にも新らしいことであろうと思います.さて,放射線と云う言葉ですが,私が今から申し述べる放射線はほんとは電離放射線と申し上げるのが正しいのですが,これは放射能を出すのは空気を電離する能力を持つているX線及びこれより短い波長の電磁波と粒子線であつて電波や光線も電磁波ではあつても放射能を出さないからです.
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