特集 結核管理
結核の問題の現在と將来
隈部 英雄
1
1結核予防会結核研究所
pp.11-15
発行日 1959年10月10日
Published Date 1959/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201951
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「この患者には,今後どういう変化があつて,どうなつて行くだろうとわかつていながら,手のほどこしようがなかつたあの暗い,結核病棟--だが優れた薬品,外科手術の長足の進歩によつて,患者の気持,療養所のフンイキはなんと明るくなつたことか.30年前と今,隔世の感がする」といわれる筆者,将来はまたどう進展していくのだろうか.
明治の終りに衛生統計がとられるようになつて以来,国民死亡原因の第1位を占めていた結核が,現在では第6位になつたことはまことにうれしいことである.10数年前まで年々少なくとも数10万人の人たちが結核で死亡していたのが,昨年度はついに4万台をわつたということは10数年前には夢想だにできなかつたことである。最近のように結核の治療法が発達していなかつた一昔前でも,早期診断,早期治療,結核は治ると声を大にして叫んでいたことは現在といささかも変りはなかつたが,あえていえば,はなはだある意味では心許なかつたともいえる.なるほど,結核を診断するという点では,現在でも10数年前でも大した差はなかつた.ツベルクリン反応で結核の感染を知り,感染しているものはX線検査を行ない,結核を早期に発見するという点では,昔といつても昭和の初頭であるが,現在とそれほど差はなかつたのである.すなわち,診断という点ではこの数10年大した進歩はなかつた.換言すれば結核に関して,診断技術は治療技術より著しく早く進歩していたのである.
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