特集 耐性問題と公衆衛生
微生物の耐性問題の將来
福見 秀雄
1
1国立予防衛生研究所
pp.368-373
発行日 1958年7月15日
Published Date 1958/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201985
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私が大学で講義を聽いた頃は感染症の化学療法と言えば主として原虫あるいはスピロヘータ等による疾病がその対象であつて,梅毒・トリパノゾーマによる病気等に対して化学療法の理論と効果が長々と述べられてはいたが,細菌感染症が問題になる場合,その論調は必ずしも希望の持てるものではなかつた。リバノール,トリパフラビンに話が触れても,その効果を決して気楽に肯定する気にはなれず,寧ろ化学療法と言うものは原虫性の疾患のものであつて,細菌感染症の場合には寧ろ駄目なものではあるまいかと考えられる傾向もあつたと思う。プロントジルがレンサ球菌感染症に対して"劇的"な効果を報道され,「細菌感染症の化学療法に対しても漸く希望の曙光が見えて来た」のは丁度この頃であつて年代は1935年であつた。
以来スルフアミンの時代から抗生物質の時代と進んで来て,微生物感染症の化学療法は細菌感染を中心に目ざましく進展した。第二次大戦の終つた直後に私は東京都立伝染病院や伝染病研究所附属病院の先生方と協同で赤痢のスルフアミン療法の研究を実施したことがある。その頃私は赤痢の化学療法としてスルフアミン剤が用いられるに到つたいきさつについて内外の論文を渉猟したことがあつた1)。たしか日本では岡田博士の報告で,百日咳に罹患中の患者,この患者が入院加療中に赤痢になつてしまつた。
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