新興宗教にどうのぞむか
真向うからぶつかりすぎたのではないか
乾 孝
1
1法政大学
pp.18-21
発行日 1957年12月10日
Published Date 1957/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201539
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新興宗教のなかには,科学や医学を信用していて,自分はもとより,ほかの人たちにも迷惑をかけるものが少なくない.それは,理クツから考えても,わからないことではない.もともと宗教というものは,科学と対立する傾向がつよいもので,キリスト教にしても,ずいぶん科学の進歩を迫害してきたものだ.だから,新らしい宗派が,その勢をはろうとするときに,科学を否定するような思い切つたことを主張するのも当然のなり行きかもしれないばかりでなく,とくに新興宗教は,古い宗教とちがつて,現世利益の約束で信者をつかまえようとするのだから,現世の問題とかかり合うのを本職にした諸科学を,いわば商売仇きのようにあつかいたがる道筋も無理のないなりゆきであろう.それにまた一方これにすがる人たち(信徒)の方があらゆる筋目の立つた努力に疲れて万一の奇跡に期待する気持で入る人たちであるのを考えれば,一見無茶としか思えない科学否定に行きつき,“教義”の教えるままに,救いを信じようとするいこじな態度も,ただ愚かと切つてすてるわけには行かないように思われるのである.これは決して"異常心理"といつてすむ問題ではない.
こんにちの日本で,新興宗教の問題が,どうにも無視することのできない大きな意義をもつているのは,あまりにも多くの国民同朋が,そういう心理に,おい込まれているからだ.
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