2頁の知識
自然陽性とB. C. G陽性
前田 道明
1
1国立予防衛生研究所
pp.62-63
発行日 1956年11月10日
Published Date 1956/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201300
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結核感染の診断法として広くツベルクリン反応(ツ反応と略す)が用いられているが,ツ反応は逆に考えると結核の免疫力を表現しているものと考えてよいであろう.ツ反応ではその発赤の大きさの直径が10mm以上を呈するものを陽性とするが,結核の予防にBCGを用いるようになつてきてからは結核の感染者以外にBCG接種による陽性が現われてきた.しかしBCG陽性と自然陽性との意義は大いに違つたものである.即ちBCG接種によつて陽転した場合には結核免疫が或る程度附与されたものとして安心してよいのであるが,自然感染によつて陽転した場合には,以前にBCG接種を受けたことがあるものでも感染後発病していないかどうかを検査するために,精密検診を行い,その結果によつては適当な処置を必要とする者も出てくることになる.従つて自然陽転とBCG陽転との鑑別は結核予防上極めて重要な意義を有することになる.
さて,10数年前に柳沢等が人体にBCG接種を行つた頃は,BCG既接種者で接種後6カ月以上経過したもののツ反応陽性者をみると,硬結を認め且つ2重発赤を伴うような強陽性(+++)の反応を示すものは陽性者中の4%以下であり,判然たる硬結だけを触知しうる中等度陽性(++)の反応を示すものは5%以下であつた.
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