2頁の知識
人工低血圧手術
太中 弘
1
1日赤中央病院外科
pp.30-31
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200933
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第二次世界大戰後米国医学の異常な進歩の結果が吾が国に移入され,胸部手術に一大革命をもたらした.この裏ずけとなつたものは麻醉,特に循還式閉鎖麻醉の確立で,これは今日吾が国至る所で安全に実施されている.ところがどれ程麻酔が完全に行われても技術がこれに伴わねば問題にならないし,又仮令技術が如何程秀れていても手術症例によつては非常な困難を伴うものである.困難な条件の一つは術中,術後の出血であるが,これも血液銀行の設立によつて大量の保存血が比較約容易に得られるようになつたので,出血に対する危険の度は非常に少くなつた.然しながら,若しも術中だけでも出血,特に実質性の出血を思い切り減らすことが出来たならば,手術そのものがやり易いのみならず,術中の危険率も減少するわけである.
以上胸部手術の他に,やはり近年急激に発侵した血管手術,特に胸部或いは腹部大動脉の脉瘤剔出手術に当つて,普通の血圧下では血流の一時停止を計るのに困難が伴う.かかる意味で考え出されたのが人工低血圧手術である.
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