職場報告
お母ちやんが死にそう
熊谷 竹与
pp.37-39
発行日 1955年3月10日
Published Date 1955/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200918
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いよいよ村でも満洲へ分村計画を建て寶情へ数名の先遺隊員が出かける事になり其の壯行式の日,先遺隊の1人より家には家族が多い故何時病人が出るか分らないないから留守中宜しく頼むと言われていた.
或る夏の夜戸を叩く音に起され外に出て見ると年の頃12,3才の男の子が息を切らせながら『お母ちやんが死にそう早く来て』と半泣で言う.よく見るとあの先遺隊の家の子供である.丁度その時は2日前より下痢を起し休んでいたのでしたが,そんな事をすつかり忘れて家を走り出しお母さんの病状を色々聞きながらふらつく足を踏みしめ踏みしめ1里許ある山の中の家へと急いだ.家の近くに着くと2人の男の人が駈けて来てカバンを持つて呉れ「お願いします」と一言言つて家の中へ走つて行つた.病人の家には近所の人が十数名集つて居り何んとなく急を告げる様相を示して居た.
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