講座
回復期の結核患者—その考え方と扱い方
砂原 茂一
1
1東京療養所
pp.6-14
発行日 1955年1月10日
Published Date 1955/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200875
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1.はじめに
結核というような狹い範囲の事柄についても専門がいくつにも分れてしまつていることは困つたことといわなくてはなりません,予防の專門家,内科的治療の專門家,外科療法の專門家,集団検診の專門家というようにこまかく分れてしまうと患者が十分な連絡もなしに唯ボールのように手から手にわたされて行くことになり一つの統一した見方,扱い方をされないために多くの不都合な事態が生じているように思います.
何といつても結核という病気は長い病気なのです.そして再発の多い病気です.従つて,安全に社会にかえつて一人立ちで仂くことが出来るという見きわめがつくまで目をはなすことの出来ない厄介な病気なのです.現在の多くの医者が結核を局部的にしか見ていないとしたらその欠陥を補う役割の少くとも一端を引きうけねばならないのは保健婦でしよう.医者は肺切除術を行つたらもう治療が終つたとして患者をほうり出すことが出来るかもしれません.しかし保健婦は家庭と職場のただ中に患者をそして回復者を見つめざるを得ない立場に置かれています.ことにベツト不足のために入退所問題がやかましくなり狹い意味での医療を終えた患者たちが比較的早期に家庭に帰される風潮が一般的になるとこの意味での保健婦の任務が益々重要性をますことでしよう.
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