保健婦の眼
よい政治をのぞむ
淡島 みどリ
pp.45
発行日 1954年3月10日
Published Date 1954/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200701
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今年は経済危機に立ち至るだろうと早くから騒がれていたが,二重橋事件にはじまつた1954年は全くいろいろの意味でいろいろの危機をはらんでいるようだ.大藏省の緊縮予算案の発表は各方面に波紋をなげかけ,私ども公衆衛生方面に仂く人々には目下,責任当局よりしもじもの一職員にいたるまで,首つながる由々しい問題として重大な関心がもたれているわけである.占領政策のゆきすぎの是正とゆうはんちゆうに入れられて打出されたこれらの事実をみるにつけても,施政者の貧困そのものの政治意識に唖然たらざるを得ない.我田引水ではなく,終戰後,連合軍によつて行われた占領諸政策の中で,かけねなく,我国のためにプラスになったものは何であつたかといえば,その最大な一つは衞生行政であると誰もが認めているのに,何たる今回の処理であろう.我国の指導者はどこの国籍をもち,どこの国民のために政治を行お弓としているのか,あらためて伺いたいものである.世界をあげてバターか大砲かと苦惱しているときに,一国の首相が,大砲だ,大砲だと心では思いながら,バターも大砲もと漫談家の放言のように無責任にかるがるしく見えすいた言辞を弄しても国民は納得がゆかないのである.
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