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開業医と私たち
山崎 千鳥
pp.57-58
発行日 1953年2月10日
Published Date 1953/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200463
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開業医と私たちの関係について,始めに結論をのべてみますと,私達にとつて最もよい理解者,協力者であるという事が出来ます.しかしこの結論が出るまでには,さんざん苦労をした思い出も沢山にあります.今この思い出を一つ一つ拾つてみますと,戦後に保健婦事業が,全体的に確立され,又各種伝染病も屆出制が実施されるようになりまして以来,その事例に最もよい看護を与える為に,家庭訪問に先だつて,主治医である開業医を尋ねたのでありますが,その当時は,保健婦とは何物であるか,全く知られていなかつた時代でありますから,先ず保健婦事業を紹介し,その上で患者に対する指導をお聞きすると,あの患者には結核だ等と話していないから訪問されたら困る,とか,私が治療をしているから何もして貰う事はない,等と医師の仕事を妨害するかのように了解される医師があり,又自分の患者を他所にとられてしまうのではないか等と心配されるお医者樣もあり,又自分の治療方法等を聞かれるのも嫌う方がありまして,行つた先でこのような困難に会いますと勇気がくじけてしまつたり,又この時間を別な家庭への訪問に使つたならばもつと能率が上るものをと,幾度か安易な方向に流れそうになりましたが,保健婦は先ず一番身近かな医師から,吾々の仕事を了解していたゞかなければならぬと,堅い決心のもとに,連絡をおこたらず続けて参りました.
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