ぼけの臨床・16
ぼけと社会
井上 修
1
1大阪警察病院神経科部
pp.934-937
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923086
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15回にわたってぼけの症状,ぼけを呈するいろんな疾患,その治療や看護について述べてきた.読者の方から‘ますますぼけが怖くなりました.ぼけたらどうしようかと思います.ぼけないためのよい方法はないものでしょうか’といった声を寄せられることが多い.確かにぼけは怖い.長生きの末にはぼけが待ちうけている.だがそれを確実に避ける方法は今のところない.病院でも高齢者がますます増え,それにつれてぼけ老人の比率も高くなってきている.病院は身動きとれなくなりつつあり,医療従事者の苦労は大変なものである.しかし,ぼけ老人を抱える家族の精神的・肉体的苦労はその比ではない.‘子供の養育に我が身も顧みず頑張ってきました.やっと成人した時には私たちは50歳を過ぎ,それと同時に父がぼけ,続いて母がぼけ,その面倒を見終ったころには精も根も尽き果て,今度は自分がぼけるのを待つばかり.私たちの人生は何だったのでしょうか’と言うことになりかねない.これは大きな社会問題である.今回もよく体験する症例をあげながら,ぼけと社会について考えてみよう.
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