ぼけの臨床・14
ぼけの治療
井上 修
1
1大阪警察病院神経科部
pp.694-697
発行日 1986年6月1日
Published Date 1986/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921443
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ぼけは治るか
歳をとれば歯は抜ける.目は見え難くなる.皺がより,足腰が弱くなる.動作も鈍くなる.老化現象である.何とか老けないようにと頑張るが,思うにまかせない.そしてついには‘歳には勝てない’とあきらめる.またからだと同様精神機能も衰える.物忘れが多くなるし,根気がなくなり,計算も苦手になる.加令と共に現われる知的機能の低下は避け難いものである.これには生理的な老化と,より重篤な病的老化がある.初老期痴呆や老年痴呆,脳血管性痴呆は病的老化である.
これらの痴呆性疾患は,老化現象であるから治らないもの,手のつけようのないものと考えられてしまう.その定義も‘脳の器質的な病変によって慢性,持続的に知的機能全般が低下するもので,非可逆的であって,回復不可能なもの’とされていた.昭和59年度の大阪府の実態調査でも,軽症や中等症の痴呆患者では60%以上が受診をしていない.老人ならば当然のことであり,治療の効果は期待できないものとして放置されている場合が多いのであろう.
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