注射事故について・8
最近における注射事故
赤石 英
1
1東北大学医学部・法医学教室
pp.297-300
発行日 1976年3月1日
Published Date 1976/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922581
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日本の医療事故では注射に関連したものが最も多いこと,殊に注射による神経麻痺が多いことから,私は,それを防止したいと念願し,数年前から話したり書いたりしてきましたが,昭和47年6月に論文として発表させられた後でも,依然として,注射による神経麻痺という最も幼稚で最も愚劣な事故が全国各地に散発しているのは,誠に残念至極なことです.最近に至るまで,権威ある医師たちによって構成されているはずの委員会などで,橈骨神経麻痺や坐骨神経麻痺の事故例に関連して,‘上腕外側に筋注したのは,注射部位として誤っていたとは断じ難い’とか,‘グロス三角に筋注したのは,一般に筋注部位とされている部位に注射したままであり,……’などといわれていたのは,誠に困ったことです.私どもの指摘以来,専門の解剖学者からも,これらの部位は注射部位として危険であることが唱えられているのです.
とにかく,従来の慣習を打破するのは,何事でも,簡単なことではありません.注射剤の性状と乳幼児の筋肉の性状からみて,少なくとも乳幼児の筋注は,生命にかかわる場合以外は,やめてもらいたいと主張しましても,現在でも,今までのように外来で筋注をしている医師が現実に存在すると聞かされましては,最早貝のように口を閉じたくなるのは当然ではないでしょうか.
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