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医学判断学
櫻井 恒太郎
1
1京都大学医学部附属病院医療情報部
pp.24
発行日 1989年1月1日
Published Date 1989/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922172
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- 文献概要
医学判断学は日本でも最近注目を集めるようになった学問,Medical Decision Makingを翻訳した言葉です.Decision Makingとは意思決定の意味で,例えばレストランでメニューから何を選ぼうか,プロポーズされて,Yesと言おうかNoと言おうかもDecision Makingです.このような意思決定では選んだ結果があらかじめはっきりしていて比較が簡単にできることもありますが,大抵は何が起こるか選ぶ人にも予想できない要素が含まれます.どうしたら少しでも良い結果が得られるかを検討するのが判断分析—Decision Analysisで,経営学などでは広く使われています.
医学においてもたくさんの意思決定の場面があります.医師は患者さんの症状を聞いて可能性のある病気を考え治療方針を決めますが,病気の診断も,治療をした時の効果も患者さんによって異なり,100%確実な予想はできません.患者さんの年齢や希望によっても最適の方針は異なります.これまでこの判断は1人の医師の知識と経験により瞬間的に決められてきました.しかし,医学の専門分化が進み新しい検査法や治療法がどんどん出てくると,1人の医師が自信を持って判断できる病気の範囲は限られます.また人間の判断には知識や経験の違いばかりでなく,不合理な偏りが起こることも知られています.
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