連載 二人三脚の闘病記・2
暗雲
我妻 令子
pp.190-193
発行日 1987年2月1日
Published Date 1987/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921647
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“知る権利”をめぐって
もう10年も前のことです.私たちの家族は米国で生活していました.上の娘が大学生,下の娘がまだ中学生だったと記憶しています.もし癌になったら告げてほしいか,ほしくないかという問題を親子4人で話し合ったことがありました.こんなことを話題にしたのは,洋が大学の講義でこのテーマを取り上げようとしていたためか,それとも,告知の問題における文化差を研究したいと考えていたからか,今では知るよしもありません.
娘たちは,ためらいもせずに「もちろん告知されなければ,私は医者を恨む」と答えました.問題が問題なので,これは私にはちょっとショックでした.自分と娘たちとの距離が,何か急に開いてしまったような,妙に寂しい気分にとらわれたのでした.
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