癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・8
復活へ向けて
吉見 之男
pp.946-948
発行日 1985年8月1日
Published Date 1985/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921168
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復活祭
4月4日の突然の苦難の再来日から,早2週間以上になる.いつもそうであるが,終わってみれば苦しみも時間の彼方に去っており,冷静に事態を見つめることができる.
あの日の翌日,妻は主治医に呼ばれて‘最善を尽くしますが,覚悟はしていてください’と言われた.それはショックではないといったらうそになるが,どうしても素直にうなずけないものがあり,むしろ‘そんなことはない,絶対大丈夫,あと何日かすれば必ず治る’という確固とした信念があったと,今になって妻は私に明かした.
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