心病む人とともに 精神科病棟での日日・9
患者さんをひっぱたいた3度の経験
三宅 富貴子
1
1東春病院看護部
pp.1046-1047
発行日 1983年9月1日
Published Date 1983/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919948
- 有料閲覧
- 文献概要
言うのを少しはばかるが,13年半の精神科勤務の間に,3回だけ患者さんを思いっきりひっぱたいたことがある.むろん3人とも男性の患者さんである.
I君は境界例で23歳,中学生のころから入院歴がある.長じては家で酒は飲むわ,手当たりしだいに薬は飲むわ,あげくに大暴れをしては地元の病院に入退院を繰り返していたが,彼と家族の信頼するA先生の転勤に伴って私たちの病棟に入院して来た患者さんである.強迫的に薬を要求し,薬品名など私たち看護婦よりはるかによく知っていた。他患との交流もできず,ぐずぐずと詰め所にへばりついていることが多かった.身の回りのことは一切せず,主治医に対する強い依存と,同時に恐怖感をも抱いていた.担当の私にもかなり依存的で,母親と同一視するようなところもあり,毎日彼1人のためにかなりの時間が費やされることになった.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.