ベッドサイドの看護
失語症患者の言語治療にチームで取り組んで—看護の担う役割を考える
高井 ミヤ子
1
,
筒井 道子
1
,
波多野 和夫
2
1大阪赤十字病院
2大阪赤十字病院精神神経科
pp.774-782
発行日 1982年7月1日
Published Date 1982/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919602
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はじめに
言語というコミュニケーションの手段を奪われた失語症患者は,幸い家庭復帰に成功したとしても,高度に組織された情報管理社会に再復帰し適応することは困難であることが多い.近年,リハビリテーション医学の発展は目をみはるものがあり,専門の施設も増えてきているにもかかわらず,その多くは身体的な障害,例えば片麻痺などの機能訓練を目的としたものであり,失語症回復のための言語訓練施設はいまだ十分とは言い難い状態である.ちなみに大阪府下で成人の失語症の言語訓練治療を受けることのできる施設は6施設だけであり(本誌Vol.46 No 5,1982年5月号,特集/失語症患者へのアプローチ,534-535ページ参照),増加傾向にある失語症患者にとって不十分であるのは言うまでもない.
通常,脳外科や神経科,あるいは一般内科の病棟に,失語症と思われる患者が何人か入院している.言語訓練室の設備のない多くの病院では,患者が自発的に話をしたり書いたりする練習をしていることもあり,家族がそれを行わせることもあり,あるいは熱心な看護婦がその根気の必要な手助けをすることもあるだろうが,多くは言語の問題については放置されているに等しいのが実情ではなかろうか.
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